発達障害の子の座席の配慮|席替えで後ろになった息子と、先生に伝えた3つのこと
席替えで席が変わってから落ち着かなくなった、集中できなくなった。発達障害のある子にとって座席の位置は思っている以上に大きな問題です。前の席がいいとは限らない理由、家での聞き方、先生に伝えるときの3つのコツを、通級に通う息子を育てるADHD当事者の母がまとめました。
二学期の席替えの日、息子がランドセルを背負ったまま「いちばん後ろになった」と言いました。
私はそのとき洗い物をしていて、深く考えずに「後ろのほうが楽でいいじゃん」と返してしまったんです。
そのあと「ぜんぜん楽じゃないよ」と言われた声が、いつもよりかたくて。
そこでやっと、これはちゃんと聞かないといけない話なんだと気づきました。
座席の位置は、思っているより大きな問題です
大人からすると、席が前か後ろかというのはちょっとした運の話に見えると思います。
私もずっとそう思っていました。
でも息子に聞いてみたら、いちばん後ろの窓ぎわは、こういう見え方をしていたそうです。
- 前の席の子が動くのが、全部視界に入る
- 窓の外の木や、通る人が見える
- 先生が遠くて、声が他の音にまぎれる
- 自分の後ろに誰もいないのに、なぜか落ち着かない
ひとつひとつは小さなことです。
ただ、気が散る材料が同時にいくつもある席だと、それを打ち消すだけで一日の体力を使ってしまうみたいでした。
授業についていけないのではなくて、授業に向かうまでにすでに疲れている、という感じでしょうか。
「前の席がいい」とは限りません
座席の相談というと、とりあえず前のほうにしてもらえばいい、と思われがちです。
うちも最初はそう思っていました。
でも通級の先生に聞いたら、子どもによって、楽になる席はぜんぶ違うと教えてもらいました。
だいたい、こんなタイプに分かれるそうです。
目に入るものが多いとしんどいタイプ
前の席の子の動き、掲示物、窓の外。
見えるものが増えるほど、そちらに注意が持っていかれてしまいます。
この場合は、前のほう、しかも視界に入るものが少ない列のほうが落ち着きやすいと言われました。
人に見られている感じが苦手なタイプ
逆に、前の席だと後ろ全員から見られている気がして、そのほうがしんどい子もいます。
この場合は前に出すと悪化してしまうので、真ん中あたりや、壁側の列が合うこともあります。
すぐに聞き直したいタイプ
指示が一回で入りにくい子は、先生に近いほうが安心です。
小さい声で「今のもう一回」と聞ける距離かどうかが、けっこう大きいみたいでした。
うちの息子は一つめのタイプでした。
なので「前にしてください」ではなく、視界に入るものが少ない席がいいようですという伝え方に変えました。
家で聞くときは、「どこが」より「何が」
子どもに「どの席がいい?」と聞いても、たいてい「わかんない」で終わってしまいます。
うちもそうでした。
うまくいったのは、席そのものではなく気になっているものを聞くほうでした。
- 授業中、いちばん目に入ってくるものって何?
- 先生の声、ちゃんと聞こえてる?
- 一日のなかで、いちばんしんどい時間はいつ?
こう聞くと、「前の人が消しゴム落とすのが気になる」みたいに、具体的な答えが返ってくることがあります。
その具体的なひとことが、そのまま先生に伝える材料になります。
先生に伝えるときの3つのコツ
通級の先生に相談したときに言われたことが、いちばん役に立ちました。
配慮をお願いするときは、困っている場面を具体的に伝えると通りやすいです。
「集中できないので前にしてください」だと、先生も何をしたらいいか分からないので。
そこから、私は3つを意識するようになりました。
1. 場面と、してほしいことをセットにする
お願いだけを伝えると、わがままに聞こえてしまうことがあります。
場面 + してほしいことの順で書くと、事情として受け取ってもらいやすくなりました。
- 場面:前の席の子の動きや窓の外が視界に入ると、そちらに注意が向いてしまうようです
- してほしいこと:視界に入るものが少ない席にしていただけると助かります
2. お願いは1つか2つにしぼる
伝えたいことは、書きはじめるといくらでも出てきます。
でも一度に5つ書くと、どれも中途半端になってしまうと感じました。
いちばん困っている1つから先に出したほうが、結果的に早く動いてもらえた気がします。
3. 席替えの前に伝える
これがけっこう大事でした。
席替えが終わってからだと、先生も動かしにくくなります。
学期のはじめや、席替えの少し前に「もし可能なら」と伝えておくと、次の席替えのときに考慮してもらいやすいです。
そのまま使える伝え方の例
連絡帳でも、面談でも、この形でお伝えしています。
最後の「難しいようでしたらそのままでかまいません」の一行は、私にとってはお守りみたいなものです。
これがあるだけで、送るときの気持ちがずいぶん軽くなりました。
お願いしていいのかな、と迷ったとき
正直に言うと、私は最初「これくらいで先生に言うのは神経質だと思われないかな」とためらいました。
音や文字の困りごとと違って、席の話はわがままに見えそうな気がしたんです。
でも、そのあと自分のことを思い出しました。
私も昔から、入り口が背中にある席だと、ずっと落ち着かない人でした。
会議でも、後ろで人が動く気配があると、話の内容が半分くらいしか入ってこない。
大人になってから、自分で座る場所を選べるようになって、やっと楽になりました。
息子は、その席を自分で選べません。
同じことで困っていたのに、私は「後ろのほうが楽でいいじゃん」と言ってしまっていたわけです。
席のことも、言ってみていい困りごとなんだと思います。

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席を変えるだけでは足りないこともあります
正直なところ、席が変わって全部が解決したわけではありません。
視界の刺激は減りましたが、それでも集中が続かない日はあります。
そういうときに救われたのが、本人が何時間でも集中できる場所が別にあるということでした。
うちの場合はパソコンでものを作る時間で、そこにいるときだけは、まわりの音も動きもまったく気にならないようです。
学校で「集中できない子」と言われている子が、別の場所ではずっと集中している。
その姿を見られると、親のほうの気持ちもずいぶん違ってきます。
まとめ
- 座席の位置は、発達障害のある子にとって「運の話」ではなく、一日の体力を左右する問題になることがあります
- 前の席がいいとは限らず、目に入るものが多いとしんどい子、見られている感じが苦手な子、聞き直したい子でそれぞれ合う席がちがいます
- 家で聞くときは「どの席がいい?」より「いちばん目に入ってくるものは何?」のほうが答えが返ってきやすいです
- 先生に伝えるときは、場面としてほしいことをセットにして、お願いは1つか2つにしぼります
- 席替えが終わったあとより、学期のはじめや席替えの前に伝えておくほうが動いてもらいやすいです
- 「難しいようでしたらそのままでかまいません」の一行があると、送るときの気持ちが軽くなります
- 席を変えても全部は解決しないので、本人が集中できる場所を別に持っておくと、しんどい時期の支えになります
席のことを先生に伝えた次の朝、息子のほうから「先生に言ってくれたの?」と聞いてきました。
まだ席が変わったわけでもないのに、聞いてきた時点で少しほっとした顔をしていて。
困っていることを分かってもらえたというだけで、子どもはずいぶん楽になるみたいです。
うちもまだ試行錯誤の途中ですが、言ってみてよかったなと思っています。


