運動会が苦手な発達障害の子|ピストルの音・待ち時間・見通し。先生に先に伝えた3つのこと
運動会の練習がはじまると崩れてしまう子について、何がしんどいのか、家でできる準備、先生に前もって伝えておくことをまとめました。ピストルの音がこわいと言った小4の息子と、自分も体育館の音が苦手だったADHD当事者の母がお伝えします。
二学期が始まってすぐの夕方、息子がランドセルを背負ったまま床にすわりこんで動かなくなりました。
理由を聞いたら、運動会の練習でピストルの音がこわい、と。
正直に言うと、そんなことで、と言いかけました。
「運動会 発達障害」で検索しているということは、練習が始まったあたりからお子さんの様子が変わってきた、という段階なのだと思います。
うちの息子(小4・ADHDとASD併存)も、毎年この時期がいちばん崩れます。
そして私自身も、子どもの頃は体育館の反響音がだめでした。
大人になってからあれもたぶん同じことだったと気づいたひとりです。
この記事では、制度の説明よりも、来週から使えることを中心にまとめますね。
運動会が苦手になりやすい5つの理由
「体を動かすのが嫌いだから」と思われがちなのですが、実際に息子を見ていると、しんどさの中身はもっと細かく分かれています。
1. 音が大きく、しかも急に鳴る
ピストル、笛、大音量のBGM、全校児童の歓声。
運動会は音の種類も量も、普段の学校生活とまるで違う一日です。
しかもピストルは、いつ鳴るかが自分では決められません。
音への敏感さは、音量そのものより予測できるかどうかで反応が変わることがあります。
息子の場合も、自分でスタートの合図を出す係のときは平気なのに、待っているときだけ耳をふさぎます。

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2. 一日の流れが見えない
いつもの時間割がなくなり、朝から夕方まで、次に何が起きるか分からない状態が続きます。
見通しが立たない時間が長いほど不安が増えるタイプの子には、これがかなり重たいです。
うちの息子も、種目そのものより「あと何時間続くのか分からない」ことのほうがしんどいと言います。
3. 待っている時間が長い
運動会は、実際に走っている時間より、座って待っている時間のほうが圧倒的に長いです。
じっとしているのが苦手な子にとって、この待ち時間は「何もしていない楽な時間」ではなくて、ずっとがまんし続けている時間になります。
出番の前に力を使い果たしてしまうのは、そのせいだと思っています。
4. 人が多くて、逃げ場がない
校庭にクラス全員が並び、まわりには保護者もいます。
いつもなら教室を出て水を飲みに行けるのに、その日は列から抜けられません。
いつでも抜けられる、という前提があるかどうかで、耐えられる時間がずいぶん変わります。
5. 勝ち負けがはっきりつく
完璧主義の子や、失敗を人に見られたくない子にとって、勝敗が全員の前で決まる場面は緊張が強くなります。
うちは、負けたこと自体よりも自分のせいで負けたと思ってしまうときに崩れます。
「がんばれば慣れる」と考えないほうがいい場面
去年の私は、練習が始まって嫌がる息子に「行けば慣れるよ」と言っていました。
でも実際には、慣れるどころか、練習が進むほど朝の支度が遅くなっていきました。
音や感覚のつらさは、回数を重ねても平気にならないことがあります。
このあたりは、努力や気持ちの問題とは少し別の話だと思っています。
私自身、体育館の反響音は今でもだめです。
何十年たっても慣れていないので、息子に「慣れるよ」と言う資格はなかったなと、あとから思いました。
慣らすのではなく、その日の負荷を少し減らす方向で考えるほうが、結果的にうまくいっています。
家でできる、当日までの見通しの作り方
特別な道具はいりません。紙とペンだけで足ります。
当日の流れを、紙に一枚書いておく
学校からもらうプログラムは、大人向けに細かく書かれていて、子どもには読みづらいことが多いです。
なので、うちでは「自分が動くところだけ」を抜き出した紙を一枚作ります。
- 何時に集まるか
- 自分の出番は何回あるか
- そのあいだ、どこで待っているか
- お弁当は何時ごろか
- 何時に終わるか
これだけです。
出番以外の時間を「待つ」とまとめて書いてしまうと、そこが不安の塊になるので、待つ時間にも終わりの時刻を書くようにしています。
「しんどくなったらどうするか」を先に決めておく
当日にその場で考えるのは、本人にも先生にも負担が大きいです。
うちは前もって、しんどくなったときの行き先と、そこへ行くときの合図を決めています。
行き先は保健室でも、日陰のテントでも、先生の横でもいいと思います。
大事なのは抜けてもいいと最初から決まっていることのほうです。
抜けていい前提があると、結果的に最後までいられる日もありました。
音の対策は、使わない日があってもいいものとして渡す
イヤーマフやイヤホンを用意する場合は、必ず使いなさいという渡し方をしないほうがうまくいきます。
持っているだけで安心する、というだけで十分に役に立っています。
学校で使えるかどうかは、事前に先生に確認しておくと当日に困りません。

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先生に前もって伝えた3つのこと
これがいちばん効きました。
通級の先生に相談したとき、こう言われたんです。
当日になってから伝えるより、先に伝えておくほうが、本人も先生もぐっと楽になりますよ。
伝えたのは、次の3つだけです。
1. 苦手な場面を、できるだけ具体的に
「音が苦手です」だけだと、先生も何をしたらいいか分かりません。
なので、いつ・どの音・どうなるかまでセットで伝えます。
うちの場合は「スタートのピストルの音が苦手で、鳴る前から耳をふさいで固まってしまいます」と書きました。
2. してほしいことは、1つか2つにしぼる
たくさんお願いすると、どれも中途半端になってしまいます。
うちが出したのは「ピストルが鳴る前に、鳴りますと一声かけてもらえると助かります」の一つだけでした。
先生がその場ですぐできることを選ぶのが、実行してもらえるコツだと思っています。
3. 本人が自分で言えるようにしておく
紙を渡すのは親ですが、渡しに行くのは本人にしました。
去年までは私が連絡帳に書いていたのですが、今年は息子が自分で先生のところへ持っていきました。
通級の先生が言っていた本人が説明できるようになるのがいちばんの力という言葉が、ずっと残っていたからです。
短くて構いません。
長い手紙より、場面とお願いが一つずつ書いてある短い紙のほうが、先生も動きやすいようです。
当日の朝と、終わったあと
当日の朝は、励ましたい気持ちをぐっと飲み込むようにしています。
去年、根拠のない「がんばって」を言ってしまって、息子から「行ってみないと分かんないもん」と返されたことがあるからです。
かわりに、決めておいたことを一つだけ確認します。
「しんどくなったら、テントの裏ね」
これだけです。
終わったあとは、順位や結果の話から入らないようにしています。
行けたこと、いられた時間そのものを先に認めるほうが、本人の顔がやわらぎます。
途中で抜けた日でも、「今日は最後まで校庭にいられたね」ではなく「行ったね」で終わらせるようにしています。
苦手な行事があっても、得意な場所は別にあります
運動会の時期は、どうしても「できないこと」ばかりが目につきます。
私も去年は、まわりの子と比べては落ち込んでいました。
でも息子は、その同じ週にマイクラで何時間も集中して作品を作っていました。
行事が苦手なことと、集中できないことは別なんだと、そこでやっと分かった気がします。
秋は行事が続いて、家でも学校でも消耗しやすい時期です。
だからこそ、本人が消耗しないで済む場所を一つ持っておくと、しんどい時期の逃げ場になります。
まとめ
- 運動会が苦手な理由は、音・見通しのなさ・待ち時間・逃げ場のなさ・勝ち負けに分かれます
- 「体を動かすのが嫌い」と一つにまとめないほうが、対策が具体的になります
- 音のつらさは、回数を重ねても平気にならないことがあります
- 慣らすより、その日の負荷を少し減らす方向で考えるほうがうまくいきました
- 家では、自分が動くところだけを抜き出した紙を一枚作ると見通しが立ちます
- 待つ時間にも終わりの時刻を書いておくと、不安の塊になりません
- しんどくなったときの行き先と合図を、先に決めておきます
- 先生には、場面を具体的に、お願いは一つか二つにしぼって伝えます
- 紙を渡しに行くのを本人にすると、自分で説明する練習になります
- 終わったあとは、結果より「行ったこと」を先に認めます
去年の私は、息子が動けない理由が分からなくて、つい急かしていました。
分かってからは、ピストルの音がこわいと言われても、そうだよねと言えるようになりました。
状況は変えられなくても、分かっている人が家にいるだけで違うようです。
うちもまだ、毎年うまくやれているわけではありません。
それでも今年は、息子が自分で先生に紙を持っていきました。
それだけで、去年よりずいぶん進んだ気がしています。

